8月6日、中国公船7隻と漁船230隻からなる大規模な船団が尖閣列島周辺の日本領海に侵入した。   これほどの船団が領海を侵犯することは異例。
 公船は漁船団の周囲を回るような行動を取っていたという。
 外務省の金杉アジア大洋州局長は同日午前、在日中国大使館の公使に対し、領海内に入らず、接続水域からも退去するよう求めるとともに強く抗議した。
 前日5日にも、中国公船(海上保安庁の巡視船に相当する)と漁船が同海域で領海侵犯を行っており、外務省事務次官が中国大使を呼んで抗議していた。
 大杉アジア大洋州局長の抗議に対して、中国外務省の華春瑩副報道局長は談話を出し、「中国側は関係海域の事態を適切にコントロールする措置を取っている」と強調。また、尖閣諸島は「中国固有の領土」であり、周辺海域を含め「争うことのできない主権を有する」と従来の主張を繰り返した。
 おそらくは、前日のリハーサルで日本側からさして強い反応も無かったことから大船団での領海侵犯に踏み切ったのだろう。
 オリンピックの開催に合わせて、大きなニュースとなりにくい日時をあえて選んだのかもしれない。
 6月には、防空識別圏に侵入した中国人民解放軍の戦闘機とスクランブル発進した航空自衛隊戦闘機が一触即発の状態になっている。
 退去を求める自衛隊に対して、人民解放軍戦闘機が空中戦に準じたと行動を仕掛けてきた(ドッグファイト)ことから実際の戦闘に発展することを危惧した自衛隊機がミサイルから自己を守るための防御装置(おそらくフレアの使用)を作動させた上で空域から離脱する事態が発生している。
 実は、これに対し日本政府は当初何の発表も無ければ中国への抗議も無くただ沈黙していた。
 航空自衛隊内部からのリークで異例の事態が発覚したわけで、中国側は自衛隊機がレーダーで照準してきたために必要な措置を取ったと正当性を強調している。
 実際のところは、2013年に、中国人民解放軍艦船が海上自衛隊護衛艦に対しレーダーで照準してきたのと同じく、中国側の戦闘機が一方的に空中戦機動を仕掛けてきてこれを避けた自衛隊機にレーダーで狙いを付け、交戦を避けるために自衛隊機が現場を離脱したのだろう。かなり危険な挑発行動だ。
 2010年、違法操業していた中国漁船が海上保安庁巡視艇に体当たりを仕掛けてきた所謂、尖閣諸島中国漁船衝突事件の際には事態を隠蔽していたとして当時の民主党政権を大いに批判した自民党だったが、それ以上の軍用機同士の異例の緊張状態に安倍政権はひたすら沈黙を守った。
 日本政府の弱気の姿勢を見た中国は、今回の大船団による領海侵犯という更に強い一手を売ってきたものと思われる。
 政権発足当初は中国に対し軍事的に強気の姿勢を見せていた安倍政権だが、長期政権を意識する現在では失敗続きのアベノミクスの挽回を図るには最大の貿易国である中国との経済的結びつきの強化は欠かすことが出来ず、領土問題で一歩引かざるを得ない状態に陥っているのだろう。
 気になるのは、これほどの大船団に対して、海上保安庁がどのような行動が取れていたのかということ。一切の情報は無いものの、圧倒的に数の勝る中国公船・漁船に対してなすすべも無かったのではないだろうか。  中国公船に守られている状態では、漁船を拿捕することもできず、ただ周辺で退去を求めるにとどまらざるを得なかったのではないか。
 今回のような局長レベルに過ぎない弱い抗議、弱い警備しか行えないようでは、1年~2年後には中国は尖閣諸島に上陸し実効支配を始めるという事態になりかねない。それ以外の決着を中国は考えていないのだから。
 国内では、マスコミ操作で誤魔化しの一手、沖縄では過疎の村に大量の機動隊を送り力技で制圧の安倍政権だが、中国を相手にマスコミ操作も機動隊も利かない。尖閣問題に対して安倍政権は明確なプレゼンスを発揮できるのだろうか。
 少しでも引けばさらに強気の手を売ってくる中国に対してどんな手が打てるか。さりとて極右と言われる稲田防衛大臣では軍事的緊張がさらに強まる懸念があり、バランスの取れた対中国政策の舵取りができるのか。  尖閣問題はさらに混迷の様相を呈している。
気になるニュース より) 

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